目が覚めると外が微かに明るくなっていた。
何時だろう?ふと時計を見るともうすぐ6時。
そろそろ着くはずだ。
その証拠に後ろで数人の客が身仕度を始めている。
それから5分くらい走ると予想通りルーイ県バスターミナルに到着した。
朝もやの中表に出ると、寒くはないがかなり涼しい。
ここに着いたら電話を入れる事になっている、
ゴーンさんの友達「スリヤウッ」以下あだ名(ピーコー)に連絡する。
ピーコーは寝ていたらしく、
寝ぼけ声で「今行くから待ってて〜」と言った。
それから15分して遠くから手を振るバイクの男を発見!
あんなに遠くから人間の顔を識別出来るのだろうか?
アフリカの人は視力が4.0とか5.0の人がいると聞いたことがある。
まさかピーコもタイの山奥に住んでるというだけで
そんな事があるんだろうか?
近付いてくるバイクはやはりピーコーだった。
3年ぶりの再会だが元気な姿は変わりなく、
大きな目を開きニコニコしている。
ピーコーのバイクの後ろにまたがり、
まずはお姉さん夫婦の家へ向かった。
着くとまだ寝ていた二人に挨拶をして今度はピーコー邸へ。
前にも来たこの家の中に入ると、登校前の小学一年生の娘さん、
ポーイとピーコーの奥さんがいた。
奥さんとは久し振りの再会、
ポーイはちっちゃかったので僕のことを覚えていなかった。
ピーコーは2年前、警官の試験に合格し、今は立派な警察官なのだ。
警察無線を腰に付け、制服のズボンを履いたピーコー。
早速出勤かと思いきや
「今日は出勤した事にして大江に一日付き合うよ♪
だけど署に一回行って出勤簿にサインしてからね☆(^O^)v」
明るい笑顔でサラリと言う言葉なのか?!(^_^;)
僕らは警察署に向かうため悪徳警官ピーコーの車に乗り込んだ。
キュル・(^^ゞ・・キュル・・・・(^_^;)・・
キュ・・・(-_-;)・・・・・キ (ToT)
エンジンが掛からない!
それもそのはず、30年前のボロボロ車、動くはずがない。
前回動かしたのは何年前なのか?立派な骨董品だ!
諦めないピーコーは近所の村人を集めた。
小さな村なので近所に声を掛ければ
車を押す位の人数はすぐに集まった。
前回のムエタイ日記でエガポンタクシーを押し掛けしたような光景が
目の前に繰り広げられる!!
しかし今日の車はエガタクの比ではない。
だがここで驚愕の出来事が起こった。
車を後ろに押し始めるみんな。
もう一度押し掛けするために助走距離を作っているのかと思った時、
ブォ〜ン☆☆!!
何といきなりエンジン始動!!
バックで押し掛け、始めて見ました!
「すっげー!ピーコー!!(^O^)/」
僕はエンジンが止まらないうちに急いで車に乗り込んだ。
快調に飛ばしピーコーの車は警察署に到着。
ここからは「ムエタイ日記」改め
「警視庁潜入24時」のロケになりそう。
ルーイ県の田舎警察署に日本のカメラが入るのは始めてだろう。
僕は緊張しながら署内に足を踏み込んだ。
ピーコーの仲間は笑顔で僕を迎えてくれた。
しばらくしてピーコーの同僚と3人で出発!
この人も来て大丈夫なのかなぁ?
村の治安は誰が守るのか少し不安になった。
タイ人の決まり事その1.
「大事な用事があっても、キン・カーオ!(まず食事!)」
この決まりに従って、やはりピーコーは僕に
「大江、お腹空いたでしょ?ごはん食べてから行こうよ♪」
と嬉しそうに言う。
近所の食堂でごはんを食べた僕達は元気一杯目的地へ向かった(^O^)/
うぉ〜っと!あんまり書いちゃうと
ムエタイ日記が面白くなくなっちゃう(^^ゞ
ちょっとワープ!
ゴーンさんの娘さん「ジン」とお兄さんの「ピーカンミー」の家は、
村で一番大きな通りから舗装されていない細い路地を
200メートルほど入った所にあった。
最初に見えたのはおばあちゃんとサル。
家前の竹細工で作られた腰掛けに座っていた。
滅多にヨソ者が入ってこない平和な村に
突然現れた不良警官2名+外国人1名!怪しまれているのか?
ふと反対側の車庫からでてきた車に目が入る。
何と運転手はゴーンさんのお兄さん(ピーカンミー)ではないか!!
ピーカンミーはドアを開けニコニコしながら
小走りで近付いてきて僕と抱き合った。
後ろを見ると青いTシャツを着た女の子が出てきた。
ん?まさかこの子がゴーンさんの娘さん?
ピーコーはニコニコしてうなずいた。
僕はずっと8歳だと思い込んでいたゴーンさんの娘さん(ジン)は、
実は12歳の小学6年生だった。
その顔はゴーンさんそっくり!
ピーカンミーもゴーンさんそっくり!
僕は二人と話をしている時、ずっと泣くのを堪えていた。
ジンを見ていると走馬灯のようにゴーンさんとの日々が浮かんでくる。
ジンが生まれた頃の写真を
毎日のように僕に見せたがるゴーンさんの笑顔・・・
そんな時、僕と喋りながらピーカンミーの目から涙がこぼれたのを見た。
僕は突然降り出したタイのスコールのように涙が止まらなくなった。
声を出すでもなく、ひたすら涙が流れた。
子ザルのイッセーを肩に乗せ不思議そうに見ているジンに僕は言った。
「お父さんは昔、僕のムエタイの先生だったんだよ。
お父さんのおかげで僕はチャンピオンになることができたんだ。
ジン、ありがとう!」
ジンは照れくさそうにうなずいた。
その笑顔の中に一瞬ゴーンさんが映ったような気がした。
思えばピーカンミーと僕は、会う度に泣いている。
ゴーンさんが亡くなる前夜、意識の薄れ始めた入院中のゴーンさんが、
ベッド脇にいたピーカンミーに
「日本人の友達のオーエーと喋りたいから兄さん電話してくれないか」
と言ったそうだ。
当時、僕の事も電話番号も知らないピーカンミーは
翌日亡くなった弟の願いを聞いてやれなかったと嘆いた。
一年後、日本からやってきた僕が
「始めまして、大江と言います。」と挨拶した瞬間顔色が変わり
「君がオーエーだったのか!」といきなり抱かれ、
声を上げて泣き出した時から僕らは毎回泣き合っている(笑)
ピーカンミーは僕に会うといつも同じ事を言う。
「ゴーンもオーエーも俺の弟、毎日オーエーの事を想ってるから・・・」
それは僕も同じ。
ジンにはお父さんもお母さんもいない。
お母さんはゴーンさんが亡くなる2年前に病気で亡くなった。
そんな境遇のジンをピーカンミーはすごく心配している。
普段から口数が少なく、学校でも友達が少ないジンは、
サルのイッセーだけが友達らしい。
でもピーカンミーはこうも言った。
「ジンのあんな笑顔を見たのは久し振りだよ。
オーエが日本からわざわざ自分を訪ねて来た事を
すごく喜んでるみたい。」
僕はそれを聞いて嬉しかった。
と同時に、ジンを他人とは思えなかった。
写真や話では生まれた時からジンの事を色々知っている。
その話を僕にしたのはゴーンさん。
来月13日はゴーンさんの6回目の命日。
もちろんお墓参りに行く。
バンコクから北へバスで11時間。ここからでも西へ5時間。
ジンはお父さんが亡くなってから5年間、お墓に行っていないと言う。
僕は「来月、一緒にお父さんのお墓へ行ってみようか!」
とジンに話した。
最初は返事をしなかったジンだが3回目に照れながらうなずいた。
決定!ピーカンミーも、みんなも喜んでいる♪
僕は今日ここへ来て、ジンに会えたことをゴーンさんに感謝した。
ピーコーがそろそろ帰るかと聞いてきた。
ピーカンミーもお店の仕入れに出掛けるらしい。
僕は悪徳警官の護衛を受けみんなに別れを告げた。
「チョッークディーナカップ!!」
嬉しい嬉しい♪良かった良かった♪
と連呼する僕を乗せた不良警官号は、
あっと言う間にルーイ県田舎町警察署へ戻ってきた。
その後、ピーコーに案内され、村のパトロールに付き合う。
とは言っても闘鶏をする村人との立ち話や、市場見学、
あげくの果てにはタイ式マッサージ屋へ(笑)
遊びだかパトロールだかさっぱり分からないピーコーの行動。
夜はピーコーが、僕の好きなソムタム(青パパイヤのサラダ)を
家で作ってくれた♪
ピーコー家の家庭料理も最高に美味しかった!(^O^)v
20:00、バンコク行きのバスの時間が迫る。
ピーコーが骨董車でバスターミナルまで送ってくれると言っている。
「エンジン掛かるの?」僕は聞いた。
ピーコーは「掛からないよ。」と普通に答えた。
また押し掛けだ(^_^;)
しかし掛からなかったら帰れなくなる!(ToT)
僕は早めに出ようとピーコーを急かした。
でも今回押し掛け要員にピーコーが連れてきた人は
明らかに泥酔した友達!
後ろから見ていると押しているのか?掴まっているのか?
それとも吐きそうなのか?
「ブル〜ン!」
おっ!酔っ払いやるじゃん!
一発で掛かった。
ピーコーは僕を乗せ、舌が回らない友達を無視してバスターミナルへ。
車内でピーコーが
「オーエー、今日は楽しかった?嬉しかった?
またルーイへ遊びに来なよ!」
「もちろん両方だよ!
ピーコー、今日は一日ありがとう!
ソムタムおいしかったよ♪また遊びに来るからね!」
そんな会話をしてピーコーと別れた。
これだからやめられない!タイ人最高!\(^o^)/